10年前、円衣裕太の退院後直ぐの引退発表は、世間を騒がすどころの騒ぎでは無かった。

勿論、それは私の中でも同じ事だった。

私は思い切って円衣裕太に連絡してみたが、その時には既に携帯は解約されていた。


週刊誌は好き勝手騒ぎ立て、日本は"円衣裕太は生きているのか?"それすら解らない程に混乱していた


退院後、一度も顔出しをせずに芸能界を辞めていった円衣裕太…

彼はきっと生きている。


あの時、社長も本田さんも、円衣裕太は助かったって言ったのだから…。




精神的にも限界だった私は2年間…休業をした。
家から一歩も出ずに引きこもる毎日、支えてくれたのは富田と佐々木だった

佐々木は自分のした事の責任の重さに気付き、落ちこぼれた私を見捨てる事無く傍に居てくれた




2年間の空白の時間の間に、紗保さんはモデルを引退。

アパレルデザイナー1本でやっていく事を発表し芸能界を去った



目まぐるしく回る時代、入れ替わりの激しい東京で、瑞乃美織の存在は、簡単に人々の記憶から薄れていった。