あの悲しい戦争を、皆が忘れかけた頃…
風の見える丘と、風の見える丘の教会は
まだあった。
丘には再び花が、草が生い茂っていた。
そこへ花を摘みに来ていた母親と娘。
「お母さん、見て!
こんなところにお墓があるよ」
「あら本当。
ここに眠っているのは…メイさんという人なのね」
「こっちのは戦争で亡くなった
男の人のだよ」
「この二人、きっとこの教会で結婚するはずだったのね。
こんなに仲良く並んで」
母親は胸の前で十字を切り、僕たちに祈った。
「ねぇ、お母さん。
この人たちのお墓にお花をあげてもいい?」
「えぇ、二人がずっと先の未来まで、ずっと一緒にいられるように祈ってあげてね」
「うん!」
僕とメイは二人で風を見ながら
いつまでも
風の中で
一緒だ。
これから先も
ずっと…