彼女の名はメイ。
5月のメイ。
春を感じさせる彼女にふさわしい名前だ。
晴れた日に、僕たちは街を見下ろせる丘の草原に寝転がり、いろいろな話をした。
僕の旅のこと
メイの家族のこと
この街のこと
そして
将来の僕たちのこと。
メイが教えてくれた。
この丘は「風の見える丘」。
いくつもの風車が風を受けて回るのが、どこよりもよく見えるから。
丘の上には小さな教会があった。
教会にも正式な名前があるのだろうが、風の見える丘にあるから
「風の見える丘の教会」
というのだそうだ。
メイは教えてくれた。
この教会で結婚式を挙げると、二人は永遠に結ばれるのだという…
僕はメイと教会の前で十字を切り、風の香りが包んでくれている中で僕たちだけの誓いのキスをした。
幸せだった。
あの日までは。