「え…?」
香輝の言葉に驚いた私は、目を見開いて彼を見つめた。
私…、過去に香輝に会ったの? 記憶にないけど…。
「もしかして…覚えてない?」
「………う、ん…」
何が言いたいのか分からなくて、私は香輝の顔をジッと見た。
そしたら香輝は、深い深い溜め息を吐いて、まいったな…。って独り言を呟いた。おまけに、少し長い前髪をかき上げながら…。
…今まで、年相応だと思っていた香輝の顔が、髪をかき上げた事によって14才より下に見えてしまった。
でも、どこかで見た事がある…。…どこで?
「…私、香輝とどこかであった事があるの?」
そう言うと、香輝は小さく笑って私を見た。
「僕が10才ぐらいの時、兄ちゃんの会社のパーティーに連れ出されたんだ。そこが全く面白くなくてね…、知らない大人に囲まれては僕にお辞儀をするんだ。……すっごく、苦痛だった」
眉を潜めている…。その時の事を思いだしたのかな? …でも、どこか懐かしそうな表情にも見えるのは私の勘違い?