「…ミーヤ…何で逃げるんだよ…」
私の肩に、ケントの手が触れようとした…。
「ッ香輝!? 都ちゃんッ!?」
悲鳴に近い声…。ウウン、悲鳴と言っていいかもしれない、聞き覚えのある声に私は弾かれたようにそちらを見れば…。
「さ、里莉…さん……」
里莉さんは、赤ちゃんを抱っこしたまま、私たちの方を凍り付いたように見つめていた。
「……邪魔が、入ったな……」
チッと舌打ちをしたケントが、里莉さんの方に歩み寄った。
ダメ……、ダメ。
「何をしている!」
その声にケントは、脱兎のごとく逃げ出そうとしたけど、その場で取り押さえられた。
あっと言う間の出来事に感じてしまうほど、彼は他の人達に捕まってしまった。
「香輝ッ!! 香輝ッ」
血相を変えて、里莉さんが香輝の側に駆け寄る。
……え…? 里莉さん、香輝の知り合いなの?