ケントの持っている鉄の棒にも赤い血が点いていた。
「…ッゃ………ゃ、だ………」
ようやく我に返った私は、声にならない悲鳴を何度も上げる。
怖い……怖い………。
誰か…助けて…。
こんなに天気がいいのに、病院の中庭なのに…何で、何で誰もいないのッ…!
何で誰も通り掛かんないのよ!!
「……に、に……げ、て……」
殴られた頭を手で押さえながら、香輝は私に逃げろと微かな声で言った。
でも、香輝の必死な訴えも、私は腰を抜かしたようにその場から逃げ出す事が出来なかった。
「……ミーヤ…」
「……ッケ、ケントッ…!!」
こっちを見たケントは、鉄パイプをカランと手から離して私に近寄って来た。