「あ、里莉さんの旦那さんは?」




全然、旦那さんの姿も名前も出ないから、ちょっと不思議になってきた。






「今日、ここを発ったの。今までの有給とかで3週間だけ、ここに滞在してたの…この子の出産に立ち会うんだって言って…」




何だろう…。



弟さんの話をしてる時とは違う…幸せそうで、でも、旦那さんと一緒にいれないのが寂しそうな表情に見えた。






…ああ、旦那さんの事、大好きなんだ…って、理解できた。









……いいなぁ…。










もう一度、里莉さんの赤ちゃんを見ると、フニャフニャな顔で、どこか腫れぼったい目を閉じて時々、口をモゴモゴさせている。




『和む』その言葉が、この子にはピッタリだった。




恐る恐る、その子に近付いて、小さな小さな手をツンとつつくと、反射神経なのかキュッと人差し指を握り締められた。