「……嫌だからな」

「お願いっ!財布なかったら困るよー!」

「駄目だ。自分で探せよ」

ぷいっとそっぽを向かれてしまった。
困った。探してる間に誰かに盗られたらもう見つけられなくなってしまう。

「一条くん、私のためなら人の過去にも行くって言ってたのに」

「…こら」

「一条くんなら協力してくれると思ったのに」

「…おい真子」

「お願い!カフェオレ買ったときに連れていって!このとおり!」

がばっと頭を下げてみる。
きっと一条くん、すごい面倒そうな顔してるに違いない。

一条くんはしばらく考え込んだあと、はーっと息を吐き出した。

「……ちょっとだけだからな」

「!!あ、ありがとう!大好き!」

「それもう1回」

「一条く…、澪くん大好き!」

「よし、任せとけ」

満足気な顔になった一条くんと向かい合って、しっかりと手を握った。

私の右手は一条くんの左手、私の左手は一条くんの右手に握られて、温かさに包まれる。

「いくぞ」

「うん」

一条くんが目を閉じたのを見て、私も同じようにした。
その途端、周りがピカッと明るくなる。
足から地面の感覚がなくなる。

一条くんと一緒に、時空を旅する。