「ね、おばあちゃん。お母さんの若い頃ってどんなだったの?」

あくまでさりげなく、話を切り出す。
今日ここに来たのは、少しでもヒントを見つけるためだ。
お母さんと一緒にいるであろうあの男の人のことが、なにかわかればいいのだけど。

「美佳子の若い頃?そうねえ、今の真子によく似てたよ。可愛らしかったねえ」

「あ、はは……」

「真子を妊娠したってときは驚いたよ。まだ結婚してなかったからね」

「!」

これはやっぱり、一条くんの推理が当たっていそうだ。

「それで、その後お母さんは結婚したの?」

身を乗り出すようにして聞くと、おばあちゃんは悲しそうに首を横に振った。
そして気持ちを落ち着かせるようにお茶をひと口飲んで、はあっと息を吐いた。

「あの子、若い頃にかかった病気がいつ再発するかわからないって言って結婚は諦めたの。でも、赤ちゃんは諦められなかったのね、真子を1人で産んだんだよ」

「え?お母さんって病気持ちだったの?」

そんな話は聞いたことがない。
お母さんも言わなかったし、普段病院に通ってる気配もなかった。
まあ私が学校に行ってる間とか、隠そうと思えばいくらでも出来そうではあるけど。

「子供の頃から身体は弱かったねえ。でも、成人するころにはもう心配ないだろうって言われてたし、結婚を諦めるほどじゃないでしょって美佳子には言ったんだけど。あの子、一度決めたら頑固だから」

となると、大人になってからは病気の心配はなかったと思っていいのだろうか?

それにしても、”もし再発したら”っていう理由で、結婚しなかったなんて。
妊娠していたことを考えると、いまいち決め手に欠ける気がして仕方ない。