ピンポーン。
インターホンを鳴らして、ドキドキしながら返事を待つ。

玄関横に置かれた植木鉢には、色とりどりの花が咲いている。
前にここに来たときとは、花の種類が変わっていた。

「はーい」

「あ、おばあちゃん。真子です」

「あらー!ちょっと待って!」

元気のいい声が聞こえてきた。
おばあちゃんの家に来るのは、お母さんがいなくなった直後以来のことだった。

間もなく玄関のドアの鍵を開ける音が聞こえてきて、おばあちゃんが顔を出した。

「いらっしゃい真子。よく来たわね」

「うん。突然ごめんね?」

「いいのよ。それより真子、1人でちゃんと暮らせてるの?早くおばあちゃんとここで暮らさない?」

心配そうにそう言われた。
おばあちゃんは、お母さんがいなくなってから何度もこう言ってくれている。
だけど私は、なかなか首を縦に振ることが出来ずにいる。

「……もう少し、考えてみるよ。それよりおばあちゃん、本当にお母さんの居場所知らないんだよね?」

そう尋ねると、お茶を出してくれたおばあちゃんが椅子に座りながら頷いた。

「……前に言った通りよ。手紙が届いたの。もう家には帰れないから、真子のことどうかお願い、って」

「そっか」

おばあちゃんは手紙をもらって、最初はとても困惑してた。
そして私に何度も謝った。
ごめん、本当にごめんって何度も頭を下げた。

だけど謝られるたびに、私は苦しくなる一方だった。
否応なく現実を突きつけられるようで、もうお母さんは戻ってこないから早くこの状況を受け入れろって言われてるようで、余計に辛かった。

だから、もう謝るのはやめようっておばあちゃんと話をした。
だって私達2人には何も出来ないから。