「橘さんさ〜...」
この人、私の名前知ってるんだ。
「ユウヤって人と仲良いでしょ」
「ユウヤ?」
いきなり出てきたユウヤの名前に反応する。
「ん、そー
ユウヤって人さ、部活やってないの?」
その一言で何となく察しがついた。
ユウヤは中学生のときサッカーをやっていた。
高い運動能力を買われ、なかなか注目を浴びていた。
中学校生活最後の試合、あと1点決められたら勝てるというところでユウヤの足は悲鳴をあげた。
ゴール間近での相手選手との接触。
シュートを打とうとした気持ちの分だけ激しい痛みがユウヤに襲いかかった。
ユウヤはその場で足を抱え込み、試合中断。
病院に運ばれその間に進んだ試合は相手に決定的な1点を決められ終了した。
私はベンチでスコアブックを握りしめ、涙をこらえることしかできなかった。