「教師の人口が少ない理由だけど、第一に子供と触れ合っても親として認識してくれないってのが理由らしいよ。」

「そ、そうなんだ...」

「そ、それでほかの子たちもいるでしょ?頭悪い子はとことん悪いし、態度も悪いからね。精神的な面で無理だってことで人が少ないんだってさ。それでほかは、自分たちの習っていたところと全然違うところを習ってるから教えられないってのも大きいみたい」

「うそ、できれば教材見せてほしいな」

「いいよーちょっと待ってて」

彼女は席を立ち、部屋に戻って鞄を持ってくる。スクールバッグは今も変わらずレトロな雰囲気を醸し出しているが、中から出てきた教材はかなり薄い

「...薄くない?」

「そうなんだけどね、中見てみればわかるよ。」

試しに中をのぞいてみると、中高の範囲がぐちゃぐちゃになった単元が頭をのぞかせている。ところどころに大学の範囲も何食わぬ顔で紛れ込んでいて、頭がパンクしそうだ。

「ちなみにこれ何年間使うの...?」

「うーんとねえ、だいたい中高一貫かな?私の学校はそうだよ。」

これを一貫で...?
文字式が入ったと思ったら一次、連立、二次...文字式の範囲がぎっちりと収められた数ページはまるで役に立つのかわからない。

「これ勉強しづらくないかい」

「教科書はね。問題はこっち」

鞄から取り出された問題集は、漫画雑誌の半分くらいの厚さで、かなりの重さを誇っていた
こちらも同様に中をのぞいてみると、ただひたすらに問題パターンと練習のための問題がずらり、文章題はそれよりももっとあった。

「厚いし重いし持ち運び大変そうだね...」

「うん、まあね。でもこっちは基本自習用なんだ。勉強するときはこっち使うの」

取り出したタブレットは薄型で、俺の時代の最新式よりも大きな画面と高画質を実現していた。

「学校からの支給品だから大切にしないといけないんだよね。授業でも使うし忘れると大変だよ」

彼女はため息をつき、うんざりという顔をした

「もうすこしいい方法、なかったのかなあ」

彼女は軽く伸びをすると、 夕飯でも作ろうかな! と辛気臭そうな顔をやめてキッチンに入っていった。


これから俺はこれをみんなに教えることになると考えると、重い罪悪感と責任感がぐっと肩に乗った気がした。