粗方の商品に目を通し、帰宅する。
彼女は広々とした2LDKのマンションの一角に住んでいる。

「ねえ、俺みたいなの連れ込んでよかったのかい?」

「朝見てみればわかるけど、結構このマンション人連れ込んでる人多いから。男の人が女の人と一夜をともにしてなんてよくあるよ」

「あれ、でも学生しかいないんだよね」

「うんまあ、そうなんだけどね。働いてるところは人それぞれでしょ?ここらへんにも社員寮って結構あるのよ。立地がいいしね。そういう人たちがいるの。」

なんと驚いた。あんなみっちりしたスケジュールの中で女を連れ込めるほど勇気と気力がある男がいるなんて。未来の日本の男性は勇ましいなとあほみたいな考えしかできなかったが、猿かと思ったら急に笑いが冷めた。

「あのさ、ちょっといい?」

彼女がひょっと部屋から頭を出すと、いい話があるんだけどといい笑顔で言った。








「学校教師ィ?」

「そ、うちの学校先生が少なくってねえ。だれかいい人材はないかって教頭が言ってたの」

ちなみにあだ名はつるっぱげねと彼女が付け加えた瞬間に吹き出してしまった。つるっぱげは卑怯だろうと腹を抱えて笑っていると彼女もつられて少し笑った。
だがしかし、ちょうどよかった。もともと国語の先生になろうと大学は一応教育科を出ている。結局会社員になったが。

「お兄さん見たところ頭よさそうだしね、きっと生徒も喜んでくれるよ」

「見たところって...失礼だな」

ため息を漏らすと、彼女はけらけらと笑った。

「教頭先生に直談判してあげるからさ、お願い?」

「はあ...別に構わないけど、もしかして死ぬほど働かされたり...?」

「あはは、まっさかあ!」

いちおう教師のシステムは俺の時代と変わってないらしく、ただ生徒たちの授業時間が伸びただけで、教師の職業もかなり待遇されているらしい

「じゃあなんで教師が少ないんだって話だよな...」

「あ、聞きたい?」

「お願いします」

即答すると、彼女はしょうがないなあとまた笑った。