「分かった。それで結婚式は何時だ? 勿論盛大にやるんだろうな?」
「え?」
会長の拍子抜けするような返事に俺も茜も開いた口が塞がらなかった。ポカンとした顔のまま呆けていると会長は大声を上げて笑いだした。
「美佐、お前の娘夫婦はいつも手のかかる夫婦だな。」
「ええ、そうですね。」
どこからか美佐の声が聞こえてくると思えば、応接セットの手前側のソファーには美佐が一人腰かけていた。
ソファーから立ち上がった美佐は、俺と茜を見て嬉しそうな顔をしていた。その表情に俺はホッと胸を撫で下ろしていた。美佐にも会長にも反対されるのではないかと内心怖かった。
以前の結婚では茜に不義理ばかりした俺なのに二人は俺を茜の夫として認めてくれたのだろうか?
「黒木、茜との結婚を許す為には条件がある。それをお前が飲めなければ茜との結婚は認めないが、どうだ?」
「お祖父ちゃん!! また、優也さんに無理難題押し付けようって魂胆なんでしょ?!」
「茜、お前は黙っとれ。私は黒木君と話をしているんだ。」
茜の言う通りすんなりと俺を茜の夫とは認めようとしていないのだろう。けれど、俺は茜の為なら何でもすると決めたんだ。だから条件が何であろうとも飲む覚悟はある。
「なあ黒木君、それで私の条件を飲むか?」
「どんな条件でも構いません。茜を失う辛さと比べたらどんな条件を言われても平気です。その条件をのみます。」
「そんな、.....どんな条件かも聞かない内からそんなこと言わないで!」
茜はかなり心配そうに俺を見ていた。茜が不安になるのも尤もだと思う。会長は茜や俺に見合い話を持ってきては別々の相手と結婚させようとしたのだから。
不安は俺にもあるが、今はそんなことはどうでもいい。茜を手に入れられるのなら熱湯に入れと言われても俺はその条件を飲む。