俺と茜はその後シャワーを浴びると遅めの朝食を食べた。勿論この日は平日で、俺と茜が揃って遅刻したことで新藤は疑いではなく事実として俺と茜の噂を広めていることだろう。
茜の承諾を受けた以上、俺は怖いものなど何もない。会長に何を言われようが俺は茜と再婚すると決めた。だから、仕事を放り出しても茜を優先させこの後会長の部屋へ殴り込みならぬ直談判に出かける。
「茜、これ変じゃないか?」
茜が俺の為にと用意してくれたネクタイを締めて見た。少し派手な気もするがせっかく茜が選んでくれたネクタイだ、会社へはこのままで行くつもりだ。
「素敵よ。優也には良く似合うと思ったわ。」
「いつの間にこんなの買ったんだ?」
俺は不思議だった。茜には長年嫌われているものだと思っていただけに、こんな風に思いを告げられるだけでなく俺の服も用意してくれているなんて。
まるで俺がここへ泊るのを分かっていたかのように何もかも揃えられていた。
「だって、お祖父ちゃんが優也さんに見合いさせるって言うから。ダメだって啖呵切ったの。今度こそは優也さんの好きな人と結婚させたいからって。」
「俺が今度こそ幸せになる為の結婚をするのとこの着替えの関係は?」
「優也さんの幸せは私と共に生きることだと思いたかったから。」
こんな可愛いことを言う茜を抱きしめたい!
新婚旅行が必要なわけが分かった。最初の結婚の時の親を同伴させたあんなバカげた新婚旅行をした俺達は夫婦じゃなかった。今思えばなんて勿体ない旅行をしたのだろうかと今更ながら後悔する。
今度こそは茜と新婚旅行へ行って昼夜問わず愛し合いたい。絶対に何がなんでも俺は茜と新婚旅行へ行く!
「茜は本当に可愛いよ」
「何時までも子ども扱いしないでよ」
「俺の中ではいつも茜は同じだよ!抱きしめてキスしたくて離したくない俺の唯一の女だよ!」
せっかく着替えたスーツなのに茜を抱きあげてはキスしていた。「シワになるよ!」と茜は忠告するもそんなのはお構いなく俺達はまたキスをしていた。