深夜遅くまで抱き合った俺達だが、流石に疲れたのかいつの間にか俺は眠っていた。その夜は、心身ともにとても満足して幸せな気持ちでぐっすりと眠れることが出来た。
好きな女と一緒に眠れる夜がこれ程に満たされるとは思わなかった。茜と一晩を過ごし初めてこんな気持ちを知った。
「トントントン」と響く包丁のリズミカルな音に俺は目を覚ました。布団にはもう茜の姿はなく台所でエプロン姿の茜が朝食の準備をしていた。
俺は昨夜そのまま眠ってしまい裸のままだった。シャワーを浴びたいと思いながらも着替えをどうしようかと少し考えた。スーツはともかくもシャツや靴下・下着などは昨日のがそのままだと思うと少し悩んだ。
このまま昨日のを着るのか、それとも、茜に頼んで買って来てもらうか。そんなことを考えていると茜が「おはよう」と俺の所へとやって来た。
「おはよう、良い匂いだ。朝飯は何だい?」
「シャケを焼いたのよ。それとお味噌汁。好きでしょ?」
「ああ、朝からご馳走だ。」
茜は布団に座ったままの俺の所へとやって来ると跪いては俺の唇へ「目覚めのキッス」と言って軽くキスをした。
「悪戯っ子め!」
茜の腕を掴んで引き寄せては抱き締めて「もっと甘いキスがいい」とおねだりをしてみた。すると、茜は俺の顔を見るとにっこり微笑んで「ダメ」とお預けを喰らった。
「シャワー浴びてきて。着替えはもう洗って乾燥させておいたから。」
「え?! マジか?」
「そう、マジよ。だから早くシャワー浴びて一緒に朝食食べましょう。」
まるで新婚生活のような時間だ。こんな時間を俺達は毎日過ごせるのだろうか?茜は今だけの関係を考えているのだろうか?
茜の気持ちが知りたくて俺は一か八かの賭けに出ることにした。
「茜、結婚しないか?」
俺のプロポーズに茜は何を思ったのか悲しげな表情を俺に向けていた。