結局、新藤らの思惑通りの合コンは失敗に終わった。

 次の機会を狙っていた他の部署の連中は執拗に新藤を呼び出していたが、俺の目の届く範囲では無理だと説得していたようだ。

 それでも新藤を信用していない俺は毎日仕事を終えると茜を自宅アパートへと送って行った。


「なぁ、なんで課長がそこまで関与するんだよ?」

「だよな、絶対に変だよな?」

「茜ちゃんって何かあるのかな?」

「あるに決まってるだろ?じゃなきゃお前の所の課長がイチイチ出てくるかよ。」


 他の社員にそう言われるとそんな気がした新藤は茜と俺の関係を探ろうとしていた。

 それはあまりにもあからさまで誰の目にも明らかだった。


「新藤、仕事に集中しろ。」

「けど、佐伯さんだって気になるでしょ?なんで課長が茜ちゃんをあそこまで過保護にすると言うか庇うと言うか・・・」

「お前さぁ、彼女の名前聞いてピンと来ないのか?」

「?」


 何も気づかない新藤は幸福者だと佐伯は呆れたように新藤を見ていた。

 そして、新藤がパソコンの前で頭を抱え込んでは何の作業もしていないことに、俺も呆れたが佐伯にもかなり鬱陶しがられていた。

 新藤のパソコンの画面を覗きこんでは溜め息を吐く佐伯の気持ちは痛いほどによく分かる。

 そんな彼らのやり取りを見ながら俺も溜め息が止まらない。


「幸せな男だよ、新藤は。」


 全く仕事のやる気など起きない俺は机の引き出しを引いた。資料を取ろうとしていたのだが、そこにあの見合い写真を見つけ、引き出しに入れて置いていたのをすっかり忘れていた。