喫茶店のオーナーに頼んで広めのテーブルのある個室へと席を移動させてもらった。新藤が連れて来た他の部署の社員達が4人並んで座り、テーブルを挟んで俺と茜、狩野、新藤の順に座った。
「あの、なんで課長が茜ちゃんの隣なんですか?」
「お前と狩野の間に座らせた方が良かったのか?」
悪あがきをする新藤に一睨み利かせるとかなり身を縮ませた新藤は大人しく口を塞いでしまった。
「さあ、遠慮なく舞阪に聞きたいことがあれば聞くと言い。遠慮はいらんぞ。楽しい親睦会なんだろう?」
社員の顔を一人ずつ見ながらそう言うと、流石に誰も俺には逆らえないと思ったのかモジモジするだけで何も聞こうとはしなかった。
そのまま静まり返ったテーブルでは大の大人が8人も座っているのにまるでお通夜の様な雰囲気だ。
「狩野さん、みんなどうしたの?」
「・・・・遠慮してるのよ、きっと。」
茜はお嬢様育ちでこんな場面には慣れていないだろうし、きっと、今、何故こんな状況になっているのかも分かっていないのだろう。大学時代に男と付き合ったり合コンに行ったりしなかったのだろうか?
まさか、ウブなままってことはないだろう?
「あの、新藤さん? お茶会って皆がそろってお茶を飲むだけなの?」
「いや・・・そのね。予定が狂って・・・・」
「ほ~ どんな予定だ? 新藤、話してみろ。」
「いやっ、ほら、課長。茜ちゃんばかり可愛いって言ったら狩野が可哀想でしょ?」
「私の所為にする気なの?!」
新藤も他の社員もどう言えば良いのか困ってしまったようで皆がみんな俯いてしまっていた。
少し可哀想な気もするがこれだけ脅しておけば次はないだろう。
茜は会長の孫であり、いずれはこの会社の上に立つ人間になるか、或いはそうなる男と結婚をするはずだ。だから、こんな所でよけいな虫が付いては困るんだ。