「じゃあ、私もついて行きますね。」
狩野の綺麗な一本線を描くような微笑みに新藤の背筋に悪寒が走るとかなり額から冷や汗を流していた。
「いや・・・ちょっとしたお茶だから、狩野は別にいいよ・・・茜ちゃんだけでさ。」
「あら、課長命令ですけど?」
「マジ?」
「左遷はお好きですか?」
狩野に課長命令と言われしかも「左遷」なんて言葉を聞かされたのでは新藤は嫌とは言えなかったようだ。
新藤は渋々狩野も一緒に喫茶店へと連れて行った。一応、お茶なので場所は落ち着きのある喫茶店で、他にも沢山のお客がいる様子を見れば如何わしい店ではなさそうだ。
店へ入ると店内を見渡し狩野はここなら大丈夫そうだと頷いていた。
頷いた狩野を見て新藤は胸を撫で下ろしていたが、予約していたテーブルには既に新藤と茜を待っていた連中が座っていた。しかし、狩野の姿を見て話が違うと舌打ちをしていた。
「なんで私を見ると舌打ちなの?」
「いやいや、そんなつもりはないけど。ほら、歓迎会だからさ。新入社員の舞阪さんだけが来るものだと思うだろう?」
待っていた社員の一人がそんな事を言うがどう見ても男性しか待っていないこの場所を見て狩野は更に溜息を吐いていた。
明らかに女一人に対して男が大勢の合コンと同じかそれ以上の最悪のパターンだと呆れてしまった。そして新藤を睨みつけるとポケットに忍ばせていた携帯電話の通話ボタンを押した。
もしもの時は、通話ボタンを直ぐに押せるようにしておけと狩野に指示したのは正解だった。
「課長が心配するはずだわ。」
「おい新藤、約束が違うじゃないか。今日は舞阪さんだけとお茶が出来るってお前が誘ったんだぞ。」
「そうだ、こんなトウの立ったような女なんか・・・・・」
「誰がなんですって?」
狩野が周りの男性社員らを睨みつけると新藤の前に立ちはだかるように立った。