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 茜が入社する一週間前の事だった。茜が会長の部屋を訪ねたのは。

 まさか、茜が会長に直談判していたとは知らず俺はその頃のうのうと仕事をしていた。


『お祖父ちゃん、また、優也さんに見合いさせるつもりなの?この写真ってなに?! 私、お願いしたわよね? 私がお祖父ちゃんの言う通りに見合いして結婚すれば優也さんは好きな人と結婚させてもいいって!』

『約束したな。ならば、茜はその見合いを何時になったらするつもりだ?』


 茜は再び会長に見合いを仕組まれてしまった。見合いをして素直に結婚すれば事は全て収まると思っていたが、茜の気持ちは収まらなかったようだ。

 悲しげな表情をして見せては涙目になっていた。


『お前がそんな顔をして見合いの席へ出れば見合い相手はどう思うだろうな?』

『見合い当日は笑顔で出席するわよ!』

『それで、黒木君は結婚したい相手というのはいるのか?』


 茜はそんな事を知る由もなく会長の質問には答えられずに俯いてしまった。そんな茜を見て会長は溜息を吐くと写真を一枚取り出した。台紙には会長の弟舞阪英寿の一人娘の沙織の写真が挟まっていた。

 その写真を茜に見せると会長は茜に一つ条件を言い渡した。



『茜、入社後一か月がタイムリミットだ。』

『タイムリミット?』

『お前が黒木を落とせなかった時は、黒木は英寿の娘の沙織と結婚させる。お前にはお前に相応しい男を用意する。』

『そんな・・・・優也さんが私とヨリを戻すはずないでしょう?!』

『お前にチャンスをやると言ってるんだ。そのチャンスを生かしてみろ。』



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「優也さん・・・・幸せな結婚して・・・ね」


 寝言を言っては眠る茜の隣で俺は何をしているのだろうか?

 お好み焼をお腹いっぱい食べたはいいが、その後、茜の説得に負けた俺はそのまま茜の部屋へ泊まってしまった。しかし、まるであの時の様に俺が茜には手を出さないと信じ切っているのだろう。

 寝室兼茶の間に敷いた布団一組に二人が並んで眠っている光景をどうすればいいのか、俺は眠れない夜を過ごしてしまった。