「分かった、もういい・・・・それで、その情報は役に立つのか?」
「はい、十分役に立ちました。有難うございました。」
茜は社員から経営側がどう見られているのか知る切っ掛けにはなっただろうが、入社初日にそんな身内のマイナスな話はショックな出来事だっただろう。
なのに茜は笑顔で受け答えが出来ているのは、流石に舞阪一族なんだと思い知ってしまう。やはり、同じ年ごろの娘とは受け取り方が違うのか?
茜は随分昔とは変わってしまったようだ。あの頃の幼い茜ではないようだ。
「分かった、もういい。今日は帰りなさい。」
新藤は一生懸命茜を飲みに誘っていたようだが、かなり茜は困っている様子で何度も断りを入れていた。
それでも、シツコイ新藤は他の日に約束を取り付けようと必死のようだ。こんな茜を見るのも面白いが、新藤が茜を気に入っているのは困る。それに、新藤はいわゆるプレイボーイ体質だ。
複数の女と同時に交際はしないようだが、あまり長続きはしないように思える。だから、頻繁に合コンへ行っているのだろう。
そんな新藤を見て狩野が呆れているからな・・・・
なんて、こいつ等のことなどどうでもいい。俺が今一番気にしなくてはならないのは「見合い」をどうするのかだ。
これ以上関わりを持ちたくなければ断ればいい。
しかし、会長命令と言われれば断れない。もし、これを断れば俺は会社には居られない。
「お前達早く帰れ」
いつまでもここで井戸端会議をされても困る。さっさとこいつ等が帰った後、俺は暫く一人で考え事をしていたい。それには自宅よりこの職場の自分のデスクに座って考えた方が落ち着く。