茜の勤務初日の仕事は新藤から新人教育を受けること。新藤は、社内の建物案内から商品開発課の設立とこれまでの経緯について詳しく説明していたようだ。
同じ室内で説明をしているのを聞く限りは真面目に新人教育をしているようだが、一旦この部屋を出てしまえば何を説明しているやら。多少の不安はあるが、狩野よりは新藤の方がこの課についての知識を持ち合わせている。
それに、社内の事は新藤の方が絶対に詳しい。
なにせ、あの男は行く先々で女達から情報を得ているのだから。呆れるほどにあのイケメン要素を最大限に活かした仕事を良くしてくれるものだ。
「はぁ・・・・何とか初日は終わった様だな。」
「課長、本当に新藤さんに任せて良かったんですか?」
「狩野、何か気になることでもあるのか?」
狩野が不安そうな顔を向けて俺のデスクの前に立っていた。いつもなら元気の良い狩野なのに、かなり手をモジモジとさせて言い難そうな表情を向けていた。
「何かあったのか?」
「実は・・・」
そこまで言いかけておいてかなり言い難そうに俺の顔を見ている狩野。言いたくなければ言わなくて良いものを、無理して伝えに来たと言うことは言いたくて堪らないことがあるという事だ。
あ~ 俺もイライラしてしまう。今日は本当に厄日だと思う。
茜と同じ部署になったかと思うと、その次は、会長命令で社長の一人娘と結婚前提の見合いを強要されたのだ。これが厄日でなかったら何と言うものか教えて欲しいものだ。
その上に狩野のこの態度だ。苛つきは最高潮に達しているぞ。
「言いたいことがあるならさっさと言え!」
「舞阪さんを社内案内する時に、合コンのメンバーを同時に集めていましたよ。」
「は?!」
何故、社内案内が合コンになってしまうんだ?! 新藤、お前はいったい新人教育を何だと思っているんだ?!
新藤は左遷確定だ。