斯くして、退魔と守護授印の儀式は無事に終了し、今日は様子を見る為に宿泊する事になった。

「…っとは言うものの、僕、荷物何も持って来てないけど…」

そう、起きてから破魔弓に急かされるまま
、簡単に支度をしてバタバタと家を出たから所持品は財布と携帯電話のみ。

勿論、宿泊セットなどは持っていない。

朔羅の小さな呟きを聞き取った桜華は、くすりと笑った。

『ご心配は無用ですよ。一式こちらで用意してますから』

部屋へ案内する為、数歩先を歩いていた彼は振り返り安心させる様に微笑んだ。

そんな彼に朔羅は、地獄耳かよっ!!と内心ツッコミを入れていたのは秘密である。

客室に通され、必要な物があったら遠慮なく言って下さいと言い残し桜華は、儀式で使った道具を片付けに戻って行った。

朔羅が通されたのは八畳間の客室だった。

部屋には机と燈籠が置いてあり、押入れにはフカフカな布団と着替え用の浴衣が入っている。

障子を開け放つと、陽当たりの良い廊下がありその先には、色とりどりの珍しい花が咲き誇る庭が一望出来る。

縁側に座り暇を持て余した朔羅は、ボーッと庭を眺めていた。

暖かな日差しの中、爽やかな風に吹かれ心地よくなっり、うつらうつらと舟を漕ぎ、そのまま夢の世界へと旅立った。