「だって、執事のまーたり先輩はちょっと着飾ってるから」


「着飾ってる?」


「はい、女の子の為にかっこよくしようと頑張っちゃってるじゃないですか」



え、そうか?


そんなつもりはさらさらなかったのだけれど、そう見えた?



「そんなことないと思うけど」


「ありますよー!」


「……へえ」


「はい! 俺はですね、どんな先輩も好きだけど自然体な先輩が1番好きなんです」



へへ、と笑う長谷部くんは、手にしたメイド服を私に突き出した。



「え、何」


「着てくださいっ」


「は?」


「密かに着てみたいって思ってたでしょ」



図星を指されたけれど、じゃあ着てみよう、とは思えない。



「や、むり。私のガラじゃなさすぎる」


「そんなことないですっ!」



食い気味にそう言ってくれる長谷部くん。


そんなことない、と言われてもそうは思えないのだけれど……。



「まあまあ、いいから着てみてくださいよ」


「え、待っ」


「着替え終わったら教えてくださいね!」



ピシャン、と扉を閉めて、お姫様は教室を出て行った。