お姫様は私を見つけて、可愛らしい顔を綻ばせながらズカズカとこちらに向かってくる。


そして私の真ん前で止まり、高らかに教室内にいるお客様に宣言した。



「みなさんお食事中ごめんなさい。実はこの人、私の執事なの。申し訳ないけれど攫っていくわね!」



一方的にそう喋り、みんなが呆然としている間にお姫様が私の腕を掴んだ。



「何してるの、行くわよ」


「え、あ、……ハイ」



ぐいっと強く腕を引かれて、私は半ば強引なお姫様に従い頷いた。



「ではみなさん、ごきげんよう」



ひらりと手を振って、お姫様が教室から私を連れ出す。


連れ出された私は、状況がわからないまま自分よりも身長の高いお姫様についていく。


人混みの中を上手にズンズン進んでいくお姫様がやっと止まったのは、一般客が入ってこない空き教室の扉の前だった。


扉を開けて教室に入ると、お姫様が「はあ、人混みすげー」と金髪のカツラを取り股を開けて座った。



「あ、まーたり先輩。強引に連れてきちゃってごめんなさい」



首から上は完全に長谷部くんなお姫様に、私は吹き出しそうになった。