後ろで「痛っ!」って声がしたから後ろを振り返ると、のんちゃんが倒れていた。
ボールは返っている。
前衛も……これは触れない。
しかしなな姉がいる。
どこに打ってくる!?
のんちゃんは動けなさそうだ。
シュートだったらポーチに出るし、ロブだったら下がった方がいい。
どっちだ!?
足をよく見て……
なな姉はためてる。
これはロブだ!
私は後ろへ駆け出す。
そこへ、ロブが上がってくる。
なんでロブなのか……
私だったらシュートぶち込んでるわ。
でもそんな事どうだっていい。
今はこのボールを返すのみ!!
私は走った。
あの日、真っ暗な中を走り続けた自分と重なる。
「いーや、重ならないねっ!」
あの日とは違い、周りは明るいしみんな見てくれている。
そしてなにより独りじゃない……
ボールをどこに返すか……
とりあえずロブだ!
私はロブを打つ。
のんちゃんはやっぱり動けなさそうだ。
「のんちゃん下がって!!!」
私は声を張り上げる。
手首では、朝に巻いたテーピングが剥がれてピラピラしている。
鬱陶しい!と、私はそのテープをビリっと剥がしてコートの外にぶん投げた。
さあ、シングルスだ!!!
U-14を思い出せ……
どこに来る?
ボールはどんなボール!?
パコン!
ボールは私のバック側、やや浅めに返ってくる。
私はそのボールに追いついて、肩をぐぅっと内側に入れた。
渡辺……
もっとサイド寄りなよ……
私はこんなに肩を入れてるんだから、セオリーならストレートだよ?
この思いが伝わったのか、渡辺はサイドに詰めてきた。
もっと……
もっとサイドに!
そうだ、そこだ!!!
ごめんね渡辺となな姉……
私はこういうボールをね……