「目を閉じて、ゆっくり呼吸してね。」



私は言われるままに従う。


のんちゃんの冷たくて細い手は私の首筋をぐぅっと軽めに圧迫し、そのまま下の鎖骨方へすっと移動する。

そして頬骨をさすって、次に首の骨の後ろをぎゅうっと押してきた。



「これで少し力抜けた?」


「ありがとね。何でもお見通しってことか……」


「そりゃあね。何年ペアやってると思ってんの。」



のんちゃんのしてくれたあの動作に何の意味があるのかは分からない。

だけど確実に余計な力はすっかり抜けていた。


これなら行けるかもしれない。


そう思った瞬間、雲の切れ間から朝日が差し込んできた。



「綺麗だね……」


「いよいよ戦いの日の幕開けだね。」



私は、今日この目で見た朝日を絶対に忘れないだろう。


そしてきっと、これから起こる出来事も。