私たちは大体6人〜8人部屋で泊まっている。
部長や私やのんちゃんを含めた団体メンバーは6人部屋で固まって泊まっている。
「ちょっと待ってね〜」
部長はそう言うと、冷蔵庫をあさり始めた。
「ほら!受け取って!」
先輩はそう言うと、ゼリーを投げてきた。
私は不意打ちで驚いたが、なんとかキャッチする。
「え、いいんですか……?」
「食欲無いんでしょ?でもせめてさっぱりしたものなら食えるかなって思って。」
「先輩……」
「明日、お姉さんと戦うんでしょ?そりゃあ体調もすぐれないわな。」
「先輩、奈々美の事知ってるんですか?」
「知ってるどころか大親友よ!?LINEもやってるし。」
「うちの姉がお世話になってます……」
「逆逆。私がお世話になってるもんwまぁ、それ食べて元気出しなね!」
「はい!ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
先輩は軽く手を振って部屋から出ていった。
とりあえずトイレに行こうとドアのところまで行くと、廊下から話し声が聞こえる。
どうやらドアのすぐ向こう側で話しているようだ。
「ゼリーあげたの?」
「うん。」
「優しいね。あんなに楽しみにしてたのに。」
「まぁねw」
「宿泊先の旅館で食べるゼリーは最高!とかって言ってた人がほかの人にあげるなんて、想像もつかないわ……」
「今まであげるどころか指1本触れさせた事もなかったくらいだしねw」
「そんなにあの2人のこと好きなの?」
「だって私は知ってるもん。あの2人が今までどれだけ裏で頑張ってたか。昨日だってご飯食べないで私たちの世話してくれたし、夜になったら荷物整理してくれたりマッサージしてくれたり。」
「あの2人だって立派な選手なんだから、本当なら下っ端がやるべきなんだけどね…」
「誰かが見てるからとかじゃなくて、本気で人のために尽くしてるって感じがする。そんな2人にこういう形で恩返しするのが、私なりの奉孝かなって思ってね。」
「なるほどね。」
「だから、部屋戻った時にあの2人爆睡しててもそっとしてあげてね。明日の初戦はかなり厳しくなるっぽいから。」
「そうなの?」
「姉妹対決。しかも姉の方は最後の全国へのチャンスがかかってる。」
「うひょぉ……姉って……ん、羽柴!?」
「そう。西高の羽柴。」
「ウチらが普通にやっても厳しい相手なのに姉妹対決と来たら……」
「レベル的には決勝以上ってとこだよね。」
「大変だね……そっとしてあげないとね。」
「うん。」
「てか、早く戻ろ?まだ食べ終わってないでしょw『忘れ物 』だとか嘘ついて、バレバレだってw」
「やっぱりバレたか〜内緒にしてね、特に2人には。」
「もちろんもちろん。」
先輩……
私たちのために楽しみにしてたゼリーを2人分も譲ってくれたなんて……
やっぱり憧れだ。
私には到底越せない存在。
それでもやっぱりいつまでも先輩におんぶにだっこでは成長できない。
これの恩返しは明日の勝利。
絶対に勝たないといけない。