ふと気が付けば、私は殺風景の中に閉じ込められていた。見えるもののすべてが黒でも白でもない灰色だった。私はこの場所を知っている。でもこの道は本当に私の知っている道なのかどうか、わからないほどににじんで先の見えないただの線と化していた。私はその線にたたずんで、糸の切れた操り人形のように転がっていた。


もうとっくに疑問の答えは出ているのだが、私はまだその答えを暗闇の中模索していた。


ここに来てもうすぐ一年がたつ。画一的な日本の高校の教育に嫌気がさした私は気が付けばここにいた。実感がわかないほど毎日はあっという間に私の前から姿を消していくのだが、高校留学を決めてからは、順風満帆な人生だった。


「えっニュージーランドに行くの!?」


と驚く友達の顔を見ては心の中で優越感に浸っていたのかもしれない。とても不安で押しつぶされそうな中、何か新しいことが私を待ち受けている予感がしていた。

高校留学ーー。
私の人生の中でそれはリスクのある危険な挑戦だったと思う。文化も習慣も、言語も違う異国での生活を送ることが並大抵のことでないくらい承知していた。だが、これほどに毎日苦しむことになるとは、だれが予想できただろう。言いたいことが思うように言えないジレンマに苦しまされ、毎日もがき続けてきた。

鳥の鳴き声が交通ラッシュの音におぼれている。

目の前を車が横行していく日常の景色の中に、なにか虚像が紛れ込んでいるような感覚だった。

何を信じればいいのかわからなくなっていた。風船に小さな穴が開いたようだった。徐々に小さくしぼんでいく私の心はやがて力尽きてしまうのだろうと他人事のようにとらえていた。