ぺこっと頭を下げると、雄大くんは「あ、いや」とか「そんな、別に」とか口ごもった。

お礼を言われているのに、たじたじするなんて彼らしい。初めて話したときと変わらず、わたしたちの会話はやっぱりぎこちない。


――『雄大くん、まじめに環のこと想ってるよ』


美那子の言葉を、ふと思い出した。わたしは急に恥ずかしくなった。


「じゃあ、ね」


会話を切り上げて踵を返し、自転車のスタンドを戻した、そのとき。


「あのさ!」


初めて、雄大くんの大声を聞いた。驚いて振り向くと、彼の顔はほてったような色をしていた。


「俺、小林さんのこと好きなんだ」


がちゃんっ、と足元で音が響く。喉の奥から変な声がもれた。倒れた自転車もそのままに、わたしはでくの棒のように固まってしまう。

雄大くんが咳ばらいをして、言葉を続けた。


「N県で小林さんが行方不明になったとき、もし二度と会えなくなったらって、すごい怖かった。
だから俺、次に会ったら後悔しないように、真っ先に伝えるって決めてたんだ」