ねえ、ノア。人間ってやっぱり滑稽だ。君たちのように、ただまっすぐには生きにくいね。

わたしたちは、つまらないことで悩む。ちょっとしたことで傷つく。迷う。つまずく。立ち止まる。

いつだって不完全な存在で、それでも小さな光を拾い集めて。強くなろうともがきながら、みんな必死で生きている。

だから、わたしも生きるよ。生きて、生きて、生き抜いて。

そうしていつか、終わりを迎えたそのときは、まっすぐ君のもとへと走っていくよ。



   ***


思いがけない人に遭遇したのは、学校まであと少しという時だった。


「――小林さんっ」


突然、耳に飛びこんできた声に、わたしは急ブレーキをかけて自転車を止めた。

振り向く前から、すでに予感はあった。わたしを苗字で呼ぶ人は少ないし、声に聞き覚えがあったから。


「雄大くん……」


思った通りの顔がそこにあり、わたしは肩で息をしながら自転車をおりた。