「どっちかといえば、健康体で、短い人生を生きたい」


自分でも驚くほどはっきりとした声で、私はそう言っていた。


『病気のせいで何も楽しくない人生だった』と思いながら死ぬのは嫌だ。

一回でもいい、好きなものを思いっきり食べてから死にたい。


「いいのか。長い間生きていれば、その病気をすっきり完治させる特効薬ができるかもしれない。その可能性は捨てるか」

「う……」


その可能性があったか。


「でも、いい。そんなの、いつになるかわからないもの」


たった一年だって辛かったんだ。もう、そんな“いつか”の希望は持てない。

待っているうちにおばあちゃんになったらどうしてくれるの。

私の答えに、死神くんは目を伏せうなずく。

そして、持っていたボードとボールペンを私に差し出す。

そこには、日本語で『契約書』と書かれていた。

一読すると、つまり残された私の寿命を短くする代わりに、病気を完治させ、健康体にしてくれると書いてある。