……ここ、どこ?

気づいたら私は、雲の上のようなところにいた。

寝ていたはずなのに今は立っている私の足元には、もやもやとドライアイスを焚いたような柔らかい地面が。

なんだか豆腐の上に立っているようで、とても頼りない。

着ていたTシャツとジャージはそのままで、腕から点滴の針が抜けていた。

私、いつの間にどうやってここへ来たんだっけ?

きょろきょろと辺りを見回すけど、周囲には何もない。

建物も植物も壁も道路も、何もなかった。

ただただ白くどこまでも広がる無の世界に、呆然とする。

もしかして、ここは天国?

私、腹膜炎が悪化して死んじゃったの?


「いや、それは違う」


突然背後から声がして振り返る。

そこには、黒いフード付きの長いマントを着た、2メートルほどある大きな影が。

驚いて後ずさると、黒づくめの人物が深くかぶっていたフードを脱いだ。


「お前は死んでなどいない。ここはお前の夢の中だ」