まあいいか。良く考えれば学校中お祭り騒ぎだもん。魔女がひとり歩いてたって、誰も気に留めやしないわ。
……けど、とりあえずほうきは置いて行くか。
そうして魔女の格好のまま、人が少ない北側の校舎へと急ぐ。
美術室の前にたどり着くと、そこには普通の格好をした健斗が。
「あははは。魔女だ」
指をさして笑われた。いいもん。笑いが取れて良かったわ。引かれたら悲しいけど。
「ちょっとじっとしてて」
「なによ」
「写真撮るんだよ。決まってるだろ」
そう言い、健斗は私が初めて作ったお弁当を披露した時のように、こちらにスマホを向けた。
仕方なく笑顔を作ってピースをする。
健斗が写真を撮りたがるときは、実は嬉しいときだもんね。
シャッター音がしたので、ポーズをやめて健斗に近づく。
「一緒に撮ろうよ」
「え。ちょっと待って。自撮り機能なんて、高校入ってから使ってないんだけど」
「嘘でしょ。ここ押せばいいんだよ」
私は彼のスマホを奪い、カメラを自撮りモードに変更する。