そんな妄想は、周りから聞こえるナースコールの音でかき消される。
修学旅行さえも鼻チューブを見られるのが嫌で行けなかった私が、男の子と恋愛をするなんて、過ぎた願いだよね。
ガリガリにやせ細ってしまった体は、体力もないし女子としての魅力もない。ただの棒きれみたい。
それに、視力にまで影響が出てきて、分厚いメガネをかけているから、目なんかシジミみたいに小さく見える。
制限されることばかりの病気の私なんて、どんな男の子が相手にするっていうの。
狭い病室に絶望が漂う。
例えば、私の病気がもう絶対に治せない不治の病だったら。それで余命数か月だと宣告されたら。
多分、一週間ぐらい泣きわめいて錯乱したあとは、思い切りやりたいことをやるだろう。
悔いの残らないよう、食べたいものを食べて、やりたいことをやって。
だけど私はそうじゃない。
治りにくいけど、命に関わる病気じゃない。