「ねえ、今日も数学の教科書ないから見せてな」

そう言って悠人くんは去って行った。

「‥やっぱ、あの転入生は彩のこと気になるんだよッ」

葵が少し小さな声で話す。

「私もそう思うよ」

舞もそう言う。

でも、鈍感なわたしは気付かなかった。


キーンコーンカーンコーン‥

昨日に続けて数学の授業。

相変わらず面白くない加藤。

でも、舞は楽しそうに受けていた。

舞は加藤が好きなんだもんね。

ふふ‥、舞ってば顔が赤いよ‥。

「‥ぇ、ねぇッ」

「はッ!?」

横に振り返ると悠人くんが声をかけていた。

「声かけられて、はッ!?‥は無くない?」

「そ‥そうだ‥ね」

少し反省。

好きな人にそんな言葉使いをしてしまったことに‥。

「それよりさ、教科書‥見せてくれない?」

「あッ、いいよ」

そう言って、悠人くんに教科書を見せた。