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「ふぁぁあ。眠い」
湊がおおきくのびをした。
この場所を見つけてからおよそ30分
俺たちは桜の大樹の下でめいめいに過ごしていた。
いつもうるさい騎士がいないからか、
俺は本を顔に乗せて木の根元に寄りかかって
微睡みの中をさ迷っていた。
「ねむい...」
俺のセリフを横取りしてどすんっと俺の隣に湊が腰を下ろした。
「ここ、気持ちいよな」
「なー」
たわいもない、そんな会話をしつつ瞼はどんどん落ちていく。
「寝る。
いい感じの時間で起こしてくれ」
「え、ちょ、和泉、いい感じの時間って何!?」
「うるせぇ寝る」
俺の意識が途切れ用とした時、
ふと小さな声が聞こえた。
「……い……」
……無視して寝てもよかったけど
なんだか、無視出来なかった。
「湊、なんか言ったか?」
「えー?誰もなんも言ってないよ」
湊が首を振っている奥で玲生たちは
不思議そうにこっちを覗き込んでいる。
「……そうか」
気のせいか……。
また再び瞼を下ろそうとした時、
今度ははっきり聞こえた。
「……ごめん、なさい」
「え……」
今度は湊達にも聞こえたらしい。
どう考えても声変わりをとっくに終えた
俺たちの低い声じゃない、女の声だ。
「ちょっと、今の何?」
玲生が眉を潜めながら俺に聞いてくる。
「俺も知らねぇよ」
「じゃあ何だっての……」
「ごめんなさい…」
不満そうに顔を歪める玲生の言葉に被せるように、
また、聞こえた。
「……なにこれ、気味悪いんだけど」