「あっ紗雪様、今日も鴉丸のお城へお出かけですか?」

 中庭に出ると、茶色の髪と目の、小さな少年が駆け寄ってきた。

 佐貫豆助。

 佐伯の雪女に仕える七代目豆太郎の弟である。兄と同じくドジっ子ののんびり屋で、従者としてはあまり役に立たない。役に立つとすれば、ほのぼのとした癒しを提供してくれることくらいか。

「うむ。今日も斑鳩(いかる)やカムイと遊んでやろうと思っての。豆助も付いて参れ」

「はい、御供いたします!」

 人間の姿に変化している小さな豆狸は、きらきらとした目で頷いた。

 鴉丸の城には鴉天狗の他にも妖怪たちがたくさん住み着いていて、この豆狸にも良い遊び相手がいるのだった。

(夏休みじゃからの。子どもはたくさん遊ばせるのが良かろう)

 紗雪はそんなことを思いながら、日差しが強くなる前にと歩き出した。

 その手に彼女の『宿題』が入った風呂敷包みを持って。











 人の世界に溶け込んで生活する妖怪たち。

 いつの間にか小岩井さんちに第二子が生まれていました(笑)