「ふむ。まあ、嫁でも婿でもどちらでも良いが。兄上はもう少ししゃきっとすれば良いと思うのじゃ。一家の大黒柱はやはり、父上のようでないと」

「うふふふ、そうですね、冬樹、紗雪ちゃんの言う通り、父上を見習って立派な主となるんですよ?」

「いえ……私は、そのような立派な父では……」

「防人さんは立派ですよ。毎日毎日、休みなく働いてくださって……」

「朝も昼も夜もじゃからのう。ほんに頭が下がる」

「……」

 防人が微妙に照れたところで(見た目には良く分からない)、紗雪は箸を置いた。

「ご馳走様でした。今日もおいしかったのじゃ」

 紗雪は雪菜に微笑みかけると立ち上がった。

「それでは今日も鴉丸城に行ってくるぞ」

「分かりました。日差しで融けないように気を付けてくださいね」

「心配はいらぬよ母上。妾は強い雪女ゆえ。真夏の太陽ごとき何ともないのじゃ」

 では行ってきます、と紗雪が用務員室を後にする頃。

 ようやく話の内容が頭に浸透したらしい冬樹が、ぶふー、と味噌汁を盛大に噴き出し、「……よ、嫁、ですか……婿……?」とかなんとか言う声が聞こえてきた。