皇城には他にも一般市民が入れる区画があったり、皇立の施設が並んでいたリと、とにかく馬鹿みたいに広い。皇城内を歩いて行き来は困難である。移動に使われるのは馬車や飛行艇だ。まあ、シオンあたりならば走って移動も可能だが。

 そんな風にやたら広いので、リザ家の城から見えるのは緩やかな丘陵が広がる長閑な風景だった。あちこちに森が見えるし、小さな川も見える。他の建物は見えない。

 その長閑な風景の向こう側に、巨大な樹が見える。

 随分と遠くに見えるようなのだが、しかしはっきりと樹だと分かる。

「あれはユグドラシェル。神樹だよー」

 シャンリーが教えてくれた。

「今日は開放日なんだな。いつもは半透明のドーム型の神殿に隠されているんだ。先生、ラッキーだな」

「う、うん? 神樹を見れるとラッキーなの?」

「あれ、ウチ(この星)のご神体だから。日本だとご神体を見るとご利益があるって言うだろ?」

「ご神体! あの大きな樹が!」

 ほえー、とリプニーは緑の向こう側にある大きな樹に見入る。

 そこから少し視線をずらしていくと、今度は細長い線のようなものが、空に向かって一直線に伸びているのが見えた。

「あれは?」

「あれは起動エレベーター」

「えっ!」

「私、一度だけあそこのリニアモーターに乗ったことあるよぉ。宇宙ステーションから見るミルトゥワは、碧くてほんとーに綺麗なんだよ!」

「ええっ!」

「リプニー先生も行ってみる? 俺たちと一緒ならたぶん、行けると思うけど」

「えええええっ!」

 ファンタジーなんだかSFなんだか良く分からない世界だ。

 驚きの連続で目を回しながら、いよいよ鍛錬場へ。