フェイレイの時代には道すらなく、シンの時代にようやく細い一本の道を通した。そしてシオンの時代、子どもたちが簡単に通学出来る程度には少ない魔力で転移可能となった。魔法の世界も日々進化しているのである。

 ただし悪用されないように、橘邸の東屋地下に設置された転移魔法陣は、グリフィノーの血族しか起動出来ないようになっているのであしからず。

 
 というわけでミルトゥワにやってきたリプニーは、まず地下から上がった先の豪華絢爛な城の様子に目を丸くした。

 天井の高い広い廊下。床は大理石のようなもので出来ているのか、ピカピカに磨き上げられている。壁には豪華絢爛な文様が彫り込まれていて、掃除をするのが大変そうだった。

「凄い、ここはお城ですか」

「うん、俺んち」

「はい!?」

「だから、ここは俺とシャンリーの家」

「家! ここが!」

 ぐるりと辺りを見渡して、あんぐりと口を開けるリプニー。

「先生、鍛錬場はこっちだよー」

 迷子にならないようにと、シャンリーが手を繋いでくれる。リプニーはキョロキョロと辺りを見回しながらついていく。




 あまりにも遠い鍛錬場までの道のり。

 そこに行くまでに、このリザ家の城のある『皇城』について聞いておいた。

 皇城の敷地面積は東京都23区くらい。その真ん中に大きな湖があり、中央にある島に建てられているのが、皇家の者たちが住まう宮殿。

 それを中心に、星型の位置にそれぞれ建てられたのが五公家の宮殿。リザ家はそのうちのひとつで、それだけならば天神学園の幼稚園から大学部までの敷地を全部合わせたくらいの広さだろうか。