「あ、先生、これつけて」

 と、シオンがリプニーの金色の髪を後ろに流しながら、耳に軽く触れる。

「えっ、なにっ?」

 くすぐったさに身を竦ませると、シオンはすぐに手を離した。

「言語自動翻訳機、みたいなものだよ。魔力がないと俺たちの星の人たちの言葉が分からないし、伝わらないんだ。先生がミルトゥワ語話せるならいいんだけど」

 耳に触れてみると、耳たぶの下から中ごろまで、凹凸のある硬い物で覆われていた。

「……イヤーカフ?」

「そう! イヤーカフ型魔力発生器(充填型)! それをつけてると、疑似的に魔力持ちになれるの。魔力持ちになるだけで、精霊を召喚したり出来るようになるわけじゃないんだけどね。リィちゃんに作ってもらったんだよ。先生、かわいいよ、似合うー!」

 シャンリーが手を叩いた。

「ネックレスだと動くと邪魔だろ? だから耳につけるのにしてもらったんだ。つけ心地はどう?」

「あ……特に気にはならないです。痛くないし」

「それなら良かった。言葉が分からなくなったら充填が必要だから。そん時は俺かシャンリーが魔力補充するから言ってくれよ」

 にこりと微笑まれて、リプニーは恐縮する。

 持っていた手鏡で確認してみると、シルバーのワイヤーで作られた花と蔦が耳たぶを飾り、散りばめられた小さな青い石が彩りを添えていた。普段のおしゃれとしても使えそうなアイテムだ。

「こんなものを頂いてもいいんですか?」

「いいんだよぉ。日頃いいモノを揉ませてもらってるお礼だから」

「揉むのを許可した覚えはありませんけどね! ……でも、ありがとうございます」

 礼を言いながら、リプニーは思い出す。

 そうか、シオンたちの故郷はエージェントリィの故郷でもあるのだ、と。憧れの先輩の故郷が見れるのだと思うと、ミルトゥワに行くのが楽しみになってきた。