いじめられている日々も、あの少女を思い出せば、乗り越えられる。クラスメートでもないのに、いつも仲良く喋っているように、脳内で微笑んでいる。なぜこんなにも、少女を意識しているのか。トイレに行っている時も、授業中でも、弁当を、食べている時も、ずっと。四六時中ずっと少女を想っている。そんな少女を想っていたら、いつの間にか一日という日は死んでいた。今日も何も無い日だったかと思い、校門を越えると、あの少女がいた。ふと笑顔になり、少女は家へ向かって歩き出した。横断歩道に差し掛かったその瞬間、凄まじい勢いで少女の方へ突っ込んでゆく、まるで狂った熊のようなトラックと共に、悲鳴を上げる人間の声と、少女の赤い液体が、まるで鍋のように混ざって来る。いつの間にか少女は飛んでいた。目にも止まらぬ速さで、少女は死んでしまった。あぁ、なぜ守れなかったんだ。なぜトラックに気づかなかったか。今の僕がやってしまったことにショックを受けている。周りがどんどん白くなって、やがては頭を抱えながらその場に崩れ落ちた。叫ぶこともなく、ただただ、心の奥底で嘆き、叫び、苦しんでいる。少女が死んでしまったことがなぜ信じられないのか、なぜ、少女を助ける術を見つけられなかったのか、本当に今もわからないままだ。