レジに入っていると、後ろから大田くんがやってきて私に話しかけてきた。

「藤原さん、このあと時間ある?」

「....勝谷さんと帰らなあかんから」

勝谷さんは今日一緒にシフトに入ってる契約社員の女の人だった。

「ちょっとだけ、時間作って抜け出してくれん?」

「なんで?」

「...頼むわぁ」


多少めんどくさい気持ちもあったけど、何もなしにこうやって素っ気ない態度してしまったのには私に非があるし、どうせなら言ってしまおうと思った。

夜9時、大田くんは用意の遅い私と勝谷さんを置いていつも先に帰る、用意が終えてから私は2人で帰るのだけど、道の途中でスーパーによるからと、別れた。

少し歩いていくと、スーパーの前のベンチに大田くんが腰掛けていた。無言で少し離れて座り、少しの沈黙の後、大田くんが口火を切った。

「俺の事怖い?」
「....? 別に普通やで」

怖いって、そういうふうに捉えてたんや。
本当のことを言えばいいのに、
気まずくなるのが怖くて、言えなかった。

「じゃあなんであんな感じなん? 花火どうするん?」
「花火ね」


一言、彼氏と復縁したからもう遊べないごめんね、だけで済んだ話なのに。なんで言えなかったんだろう。

「ごめんな、ほんまは大田くん今日機嫌悪いように見えたから、話できなかってん」

「そうか、俺、友達には怒らんから!俺、こういう顔やから怒ってるように見られるけどそんなことないから!」

わかってるよ。
とりあえず仲直りではないけど、丸く納まって、帰ることにした。花火も行けないって、その場で言えなかった。



結局私は、信二よりも、大田くんと一緒にいることを選んでしまっていた。