6月24日。

私は信二と別れた。

バイト先のみんなも応援してくれていたから、報告したらかなり驚いていた。人生何があるかわからないねって。まだ20歳なんだからこれからいくらでも出会いあるよ、頑張れって励ましてくれる人もいた。谷口くんにももちろん報告した。

今日のバイトのシフトのメンバーは、私と谷口くんと、そして大田くんだった。初めてこの3人でシフトに入るので、内心嬉しくて仕方なかった。
少しでも話せるといいな。

私は13時からのシフトだったので、16時からバックヤードで休憩を取っていた。
すると、品出しを終えた谷口くんがバックヤードに戻ってきた。

「あ、おつかれー」
「何食べてるんですか」
「クリームパン、いる?!」
「あ、もらいます」

5個入の小さなミニクリームパンを谷口くんにあげると、谷口くんも隣の椅子に座ってきた。

「...まあ、別れて良かったんじゃないですか。話聞いてたら」

「あんなに一方的によかったんかな。ちょっと酷かったかなとも思ってるねん」

「別にいいでしょ、別れる相手に優しくする必要なんてないんですよ」

谷口くんは前述の通り、本当にモテる。
高2の時に今の彼女と付き合い始めてからは、一途になったらしいけどそれまでは彼女を取っかえ引っ変えしていたらしい。
そんな彼の言うことだから、妙に納得感があった。

「で。大田くんはどうなんですか?」

急ににやけ顔になって、面白そうに尋ねてきた。

「別に、何も無いよ。....いいなぁ、とは思うけど」
「今日よかったですね! 俺邪魔しないようにしますね♪」

そういってクシャッと子供みたいに笑う谷口くん。
と、その時だった。

バックヤードのドアが勢いよく開き、レジをしている大田くんが顔を出した。
やばっと思って直ぐに視線を逸らしたけど、こちらを見ているような感じはした。

ドンッ

バックヤードのドアが勢いよく閉まった。
....も、もしかして、怒ってる?

「谷口くん、レジ混んでないかな」
「あっ、ちょっと見てきます!」

谷口くんはそういって小走りでこの場を去った。