「まいどー○○運輸でーーす」



ガチャンッ


荷物がやってきた。蛍光色の制服に身を包んだ運送業者は、花梨菜の彼氏と同じ会社だ。もちろん支店は違うが。



「お願いしまーーす」


業者差し出した伝票に俺はサインしながら、ちらりと業者の顔を見る。花梨菜の彼氏と重なった。神戸にいた頃、まだ花梨菜と付き合う前から配達に来ていたため、俺は彼を知っていた。
彼もまた俺の顔を知ってる。

てか去年俺の県に旅行来るからってわざわざ二人で店寄ってきたし。別にええけどさ。




あいつも今頃ハンコお願いします〜とかいいながら、花梨菜とバックヤードでいちゃついてるんかな。


俺と花梨菜がしてたみたいに。


花梨菜のあの手も身体も全てが今は、あいつのもの。あいつだけしか触れることが許されない。当たり前のように撫でていた頭も、今はあいつが当たり前のように撫でているだろうし、これからもそう。



まあ、花梨菜の「初めて」は俺がもらったけどな。



「あの…」


「え?」


「僕の顔なんかついてます?」



「え、は?あぁ、ごめんごめん…はい」



変な事考えながら、関係のない業者の顔を眺めていたらしい。慌てて伝票を渡して、業者は帰っていった。




「しょーもな」



くだらんこと考えてる場合じゃない。
仕事仕事!さぁ〜今日も荷物多いぞ!