大阪駅からまた電車に乗り、大阪環状線のとある駅で降り、そこからまた徒歩で会場に向かった。舞台は既に始まっていて、こっそりと入った。
劇はオムニバス形式になっていて、ファイティンの出番は最初で終わってしまったけど、そのあとのお話も面白かったし、みんなが楽しそうに演技しているのをみて、なにかに夢中になれることって羨ましいな、素晴らしいなと思った。
劇が終わり、会場を出ると、出演者たちがサイドに立っていて暖かく見送ってくれていた。
その中であたしはファイティンをみつけて、思わず駆け寄った。
「ファイティン!めっちゃ良かったよ!お疲れ様!」
ファイティンは大きな目をさらに丸くさせて、驚いていた。
「え!ほんまに見に来てくれてたんや!ありがとう! てか…」
ファイティンはウッディの方に視線を向けた。
この二人も二年ぶりの再会だ。
「高島さん、お久しぶりです。見に来てくださってありがとうございます!」
「いやいや。途中からしか見れんかったけどごめんな」
「いえいえそんな…」
二年前、三人でバイト終わりに駅の改札前で寒い中一時間も二時間も語り合ったことや、あまりにも毎日ファイティンの帰りが遅いため、お母さんが迎えに来た笑い話や、思い出話に花を咲かせた。
すると、あなたの話題をウッディが突然口にした。
「てかそーいやさー、聞いた?川岡さん。店長と藤原さんの話!」
「あー聞きましたよ!びっくりしました!もーー」
ファイティンは呆れたような、そんな表情を浮かべた。
「いやまあ俺は予想してたけどな、でしょうね!て感じやわぁ」
「もーやめてよ二人とも、もう過去の話なんやから!」
「過去の話」
完全にそう言いきれたら、
あなたを過去の人として、吹っ切ることが出来たなら、どんだけ楽なのかな。
「まあまあ…花梨菜には今彼氏おるもんな。幸せそうやし」
「俺さー店長に会いたい言われてんねんけどさ、たしかに俺も会いたいけど、藤原さんと三人?俺途中で抜けなあかんやつやん!」
ウッディはからかうような顔で、そういった。
ファイティンは高らかに笑う。
「いやいや!そんなんええから! ふ、ファイティンは、こんよな?」
この二人は知ってる。
あたしがまだあなたのこと忘れてないこと。一応ね。
あなたと私の関係を知って、ファイティンはもうあなたとは会いたくないなぁといっていた。無理はない。「そういうこと」してるレッテルを貼ってしまうもんね。向こうは、既婚者だし。余計。
「うん…合田店長とは会えないわ」
「なんでーや、あったりぃや、川岡さん店長のこと苦手やねんなぁ」
「いやいや!まあもともと店長のこと苦手やったもんなぁ、ファイティン」
あたしがウッディの発言にすかさずフォローをいれる。それに、別にファイティンとあなたはもう二度と会うこともないやろうし。本人たちにはどうってことないだろう。
「とりあえずまた!このメンバーで飲みでもいこうよ!」
「いいねいいね〜♪ とりあえずファイティンの舞台が終わってからやな!」
「うん!…あ、ごめん。もうそろそろいかなきゃ。本当に今日はありがとう!また飲みにいこうね!」
ファイティンは時計をちらりとみて、あたしたちに挨拶をすると、会場のほうへ戻っていった。
「…よし、いくか」
「うん」
「腹減ってない?」
「すいた〜。梅田でなんか食べて帰る?」
「おー。そうしよか。俺らといえば、サ○ゼやろ」
「あたしもそれ思ってた〜!!」
昔二人やみんなでよくいったファミレスの、梅田店に行くことになった。