「ねぇ」
あたしは、今まで一度もあなたから
好きと言われたことがなかった。
「あたしのこと、どう思ってたか、正直に言って欲しい」
「どう思ってたか?!」
突然の質問に、あなたは困惑した声をあげた。
ふん、そうやって困るなら
その程度やったんやないん。
そんな思いはすぐにかき消された。
「そやな、、、、支え」
「支え?」
それまでのなんとも言えないモヤモヤした気持ちが一気に取り消された。
「一人何も知らんところに配属されて、店のスタッフは大変なやつばっかで、寂しくて辛い時に、花梨菜がうまいこと俺のところにきたんや。まあ、俺が根性なかったゆーことやな」
あなたはそういって、少し笑った。
「あのさ、、、、」
あたしはもう一つ聞きたかったことがあった。
「奥さんのこと、どう思ってるん?」
「嫁は、家族やな。いて当たり前の存在。恋愛感情とかそんなんもう忘れたよ。花梨菜はまだわからんやろけど、、、ほら、家にお父さんが帰ってくるようなもんや」
わかりやすい例えだった。
けど、なんとなく想像はできた。
なんとなくだけど。
「あたしな、とある人に、花梨菜は性欲処理の道具として遊ばれてるだけやって言われた」
とある人、とは
パート主婦の水原良子さんだった。
良子さんはわりとなんでも話せて、
あなたの話も打ち明けていた。
「はは、まあ第三者から見たらそう思われても仕方ないわな....
例えばさ、俺が離婚して花梨菜と結婚したとするやん」
「うん」
「そないしても、花梨菜はおもんないのよ。
バツイチで家族も親戚もみんな裏切って金もない俺と、結婚しても。だから、、、、俺は、好きって言葉は一切口にせんかった」
「ん、、、、、」
わかるようでわからないあなたの言葉。
俺じゃお前を幸せにはできない。
そう言われてるようで、でも
好きと思ってくれてたのは確かで。
電話を切る時、あなたの声は
こころなしか震えていた。
電話を切ったあたしは、泣いていた。
ぁあ、、、、本気で、大好きやったんやなぁ、