「やだな、里濱じゃなくて海里でいいって!」

相変わらずまぶしいほどの笑顔。
現役選手の時も今もそうだけど、女子からの人気は絶大なものだ。
人当たりもいいし、かっこいいし、紳士的だし!
王子様を生き写ししているみたいだ。
それに対して、どこにでもいるような平凡な私が先輩と関われているのは奇跡だと思う。
きっかけは、恥ずかしくも目の前で私が転んだことだが。
『大丈夫?これ使って』
膝から血が出ている私にハンカチを渡してくれたあの時の先輩を目をつむるだけで思い出せる。

しかし!
翔と蒼磨はなぜか先輩のことが嫌いみたいで近づくなと言っていた。
2人とも、先輩が完璧すぎて悔しがってるのかな。

「海里先輩、今日はどうしました?」

今は忙しい時期なのに私なんかに構って…。

「雨だけどさ、今日は補習ないから一緒にお出かけにでも行こうと思って。どうかな?」

「お出かけ…ですか?」

「うん」