奥歯でギュッと噛む。すると、唐揚げ特有のジュワーッとした油が口の中で溢れ出てくる。にんにく醤油の下味が利いた肉の旨味が舌の上に広がって、鼻から抜けていく。



美味い。絶品だ。冷めていたが、それがよかった。



すかさず、白米を掻き込んだ。白米はこんなに甘かっただろうか、ねっとりとした軟らかめのご飯が、唐揚げと口の中で混ざり合って、程よい。カンタータ。これはカンタータだ。



「すごい勢いで食べるね……そんなにお腹減ってたんだ。」



食べるのを止めた祭を他所に、夢中で唐揚げ、白米を交互に繰り返した。備え付けのポテトサラダ。ああ、マヨネーズが利いていて、じゃがいもの硬さもちょうどよく、口の中でホロッと崩れていく。そこに、枝豆や小さく刻まれたニンジンが現れてくる。



まるで、ミュージックビデオの端と端からメンバーがカットインしてくる感覚。音に合わせて、タイミングよく現れる。



祭からコーラも奪った。キンキンに冷えたコーラを口元へやると、しゅわしゅわが口の中いっぱいに広がって、喉が潤っていく。ストップをかけると、思わず目をつぶって、「あ~っ!」と声が出てしまう。



ポテチを手に取った。凸凹といびつな形をしていて、手に付く油と塩が、警告してくる。



「この食べ物は脂ぎっていて、程よい塩加減で、サクサクパリパリですが、それでもいいですか?」



もちろんいいに決まってる。口に運ぶ。パリッと薄いポテチが割れる音がして、口の中に全部持っていくと、じゃがいもの風味と程よい塩が舌先を刺激する。パリッという音が、サクサクに変わって、口から耳に伝わって、音でも美味しさを感じられる。



塩味を中和するためにはチョコレートが一番だ。板チョコを前歯で咥えて、手で手前に力を加えてやると、パキッと音が鳴る。噛むと、中で甘い甘いチョコレートが溶けてきて、塩味のポテチと混ざり合って、甘じょっぱい。



カツサンド。ああ、言われなくてもわかるぞ。口に入れて、噛んだ瞬間、甘いタレのついたカツをしっとりとしたパンが優しく包み込む。



フランクフルト。ああ、お会いしとうございました。思わず一礼し、涙ながらに食べた。



美味い。どれも美味い。死ぬほど美味い。これなら明日死んでも本望というほどに美味すぎた。